特急列車と言えば、たいてい普通列車では走りきれないほどの長距離を走るのが一般です。しかし、徳島には、普通列車よりも短い距離しか走らない特急列車が存在しました。それは、「特急ホームEXP阿南」です。
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 この列車は、徳島~阿南を結んでいた帰宅ラッシュをさばくための特急列車でした。しかし、残念ながら利用者低迷のため、この特急列車は2019年3月16日のダイヤ改正をもって廃止となり、新しい時代を迎えることはありませんでした。今回は、日本でいちばん走行距離の短かった特急列車の特集です。

 ホームEXP阿南が誕生したのは、今からわずか11年前の2008年のこと。それまで、比較的利用者数の多い徳島~阿南を結んでいたむろと51、52、53号に、新たに愛称をつける形で誕生しました。このとき利用者数が芳しくなかったむろと54号は廃止となりました。

 このときの運転時刻は、

1号 徳島18:00 →阿南18:27
3号 徳島20:52 →阿南21:25

2号 阿南7:50 →徳島8:18
4号 阿南18:32 →徳島19:00

でした。このうち2号のは今でも使われているスジですね。

 ところが、残念なことに牟岐線の利用者数は改善されず、2012年にはホームEXP阿南は1往復に削減されてしまいました。その後1日1往復体制で徳島と阿南を結んでいましたが、今年の牟岐線へのパターンダイヤ導入によって牟岐線の特急は合計4往復あったものが1往復にまで減少。その影響でホームEXP阿南は消滅してしまいました。

 最後に牟岐線の特急に乗ったのはおととしの11月のこと。バースデーきっぷを使って乗ってみました。まずはホームEXP阿南の様子をご覧ください。
 2017年11月24日、ホームEXP阿南1号に乗車。
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 通勤特急なので割と人が乗っているのかと思ったら、思っていたよりもスカスカ………… 一車両あたり10人も乗っていなかったと思います。それから30分かけて阿南に到着。結局車内がスカスカの状態のまま終点に到着してしまいました。
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 この写真を撮影してのは18時28分。それからすぐに徳島行きとして折り返していきました。
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 徳島行きの列車は阿南行きの列車に比べて乗車率は良かったと思います。正直、人口のずっと多い徳島駅から出発する列車よりも、阿南駅から出発する方が乗る人が多いのかと予想を覆してしまいました。徳島行きの乗車率は半分~3割くらいだったと思います。

 これはまだ乗車率がいい方でしょう。真っ昼間の牟岐線特急は本当に空気輸送そのものでした。ホームEXP阿南に乗った2日後、特急むろとに乗車。
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 それなり利用者はいるのかと思って乗ってみましたが、実際に乗ってみると乗っていたのは1両あたり数人程度。完全に拍子抜けしてしまいました。1時間ほどかけて牟岐に到着。
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 メインの目的は甲浦まで行くことだったので、二つ列車を乗り継いで甲浦に到達。そこから同じ要領で牟岐まで戻り、そこからまた特急むろとに乗りました。
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 今度は中国人らしき観光客が大勢(10人くらいだったかな?)乗っていたので、牟岐行きに比べて乗車率が良かったです。しかし、JR四国はこれだけの乗車率では満足しなかったのでしょう。

 ここで、徳島~阿南の所要時間を比べてみましょう。2019年3月16日現在で運転されている唯一の牟岐線下り特急、むろと1号の発時刻(阿南だけ着時刻)は

徳島 19:33
阿波富田 19:36
南小松島 19:45
羽ノ浦 19:53
阿南 20:00

です。徳島から阿南までの所要時間は27分。ちなみに反対向きのむろと2号の発時刻(徳島だけ着時刻)は

阿南 7:50
羽ノ浦 7:57
南小松島 8:05
阿波富田 8:16
徳島 8:18

で、阿南から徳島の所要時間は28分です。

 これに対し、徳島~阿南の普通列車の所要時間は、パターンダイヤが適用される時間帯は下りが47分、上りが45分です。速い列車だと40分以内に結ぶ列車もいます。結局、JR四国はたった20分所要時間を短くするよりも、本数を増やしてわかりやすい時刻に列車を設定する方が賢いと考えたのでしょう。

 牟岐線のパターンダイヤ採用が発表されたのは2018年12月のこと。もしやホームEXP阿南はもう二度と見られなくなるのではないかと思い、卒論で忙しいのを承知で徳島駅に行きました。2019年1月13日に撮影したときは、剣山色(キハ185-13)と四国色(キハ185-1016)のミックスでした。
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 とりあえず一通りは撮れましたが、これを国鉄色のときに撮りたいと思い、卒論発表が終わった後、国鉄色が運用に入るのを見計らって再び徳島駅に行きました。

 前日にうずしお9号として国鉄色のキハ185が高松から徳島に来たことを確認したので、2019年2月21日に撮影を決行。ホームEXP阿南と同時に消滅する、15時台の牟岐行き「むろと5号」を撮影し、ホームEXP阿南が国鉄色(キハ185-18+キハ185-17)で運転されることを確認。_DSC9073_190221_151130

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 約2時間半後、折り返しのむろと6号が到着。
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 キハ185のサボは外から交換する仕組みとなっていて、
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 作業員がサボを交換し、
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 ホームEXP阿南1号として走る準備が整いました。こうして18時01分、定刻通り出発しました。
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 そして約1時間後に、折り返しのホームEXP阿南2号が到着。
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 役目を終えたこの編成は、次の剣山13号への運用のため、いったん留置線に引き上げていきました。

 さらにこれだけでは飽き足らず、2019年3月3日にも撮影。この日は、2月21日と違うアングルで撮影しました。むろと6号を、今度は真正面から撮影。
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 到着後すぐにサボを交換し、
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 列車名変更が完了。ホームEXP阿南の側面サボは、少し字体が違います。
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 先ほどと同様、ホームEXP阿南を真正面から撮影。人が多かったのでこの手法が使えるかどうか怪しかったですが、ほかの撮影者のご協力あって、なんとか撮れました。
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 約1時間後、2号が帰ってくるので、また真正面から撮影。ホームがあまりすっきりしていなかったので、ホームを隠すつもりで撮りました。
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 その後、サボを交換せずに引き上げ。2月21日にはすぐに交換されたので、少しでも見られて良かったです。
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 その後留置線に到着しても、しばらくサボは交換されませんでした。
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 2月21日、3月3日は両方とも人が多かったです。国鉄色だったからという可能性もありますが、いちばんの理由は、もう廃止になるから撮っておきたかったからだと思います。これからも牟岐線は厳しい状態が続き、最悪阿南以南はそう遠くない将来廃線の可能性も考えられるでしょう。そうならないためには、今のうちから乗って残すのが最善の策です。

 利用者が増えれば廃線になる可能性は低くなります。徳島の道路は渋滞しやすいこと、パターンダイヤ採用で発車時刻がわかりやすくなったことで、牟岐線を利用するメリットも十分考えられます。江差線、三江線などの二の舞にならないように、手遅れになる前に、JR四国と牟岐線の利用者は、牟岐線をこれからも残すための方法を考える必要があるでしょう。



参考文献
むろと (列車)